日本式教育を取り入れた学校 「テンサイ」を訪問してインタビューしました

 2019年3月4日、キルギス日本センター(KRJC)の第20期実践的経営コース(通称ミニMBAコース)卒業生であり、知的開発ネットワークセンター「Zvezdochki」の設立者であり、テンサイ小学校の創設者でもあるシァラポワ・ジベックさんを訪ねました。テンサイ小学校は2018年9月に開校しました。日本の教育を取り入れ、キルギスでは新しい教育を行う学校として注目されています。今回のインタビューではテンサイ小学校の教育理念、日本の教育から学ぶ理由等、お話を伺いました。

日本の教育を取り入れる理由は何ですか?

 キルギス式の教育だけを行う場合、色々なルールや制約があります。そのため、日本の教育を取り入れることで授業の幅を広げられると考えています。日本の教育を取り入れる上では、ごみを分別すること、時間を守ること、たくさんの読み物を読むこと、自然を大切にすることなど日本人の良い慣習を参考にしています。これらは人として大切なことですが、キルギス人の中にはできていない人も多いため、テンサイ小学校で教えることで生徒たちがこの現状を変えてくれることを期待しています。

・日本の教育の良いところを参考にされているそうですが、具体的にどのような取り組みをされているのか教えてください。

 まず、ごみの分別を学んでもらうため、ごみ箱はごみの種類に応じて複数設置するようにしています。また、たくさんの本を読んでもらうために、学校の本棚は毎月新しい本を置くようにしたり、学校内でのスマートフォンの使用を禁止したりしています。さらに、植物を大切にする心を育てるため、生徒たち自身が野菜や花の水やりなどを行うようにしています。

授業は生徒15人以下で実施するとのことですが、これにはどのような意図がありますか。

 キルギスでは学校数の不足により学校に生徒が飽和しており、先生が子供たち一人一人に向き合う時間が不足しているという問題があります。それを踏まえテンサイ小学校では人数を15人に制限し生徒一人一人に質の高い教育の提供を目指しているのです。

テンサイ小学校では通常の初等教育に加えて、空手、そろばんなど様々な授業を行っているそうですね。これにはどのような意図があるのでしょうか。

 通常の初等教育に加えて、テンサイ学校では外国語、空手、ロボティクス、IT、チェス、音楽、暗算等の授業を行っています。様々なことを経験させることで生徒の想像力を豊かにし、将来の選択肢を広げることを意図しています。

外国語の授業はどのように行われていますか。

 外国語の授業は週に5回行われます。現在ではまだ0年生、1年生しかいないため、授業では、歌を歌ったり、自己紹介をしたりと外国語を学習するうえで土台となるような学習を中心に行っています。通常の授業は公用語であるロシア語で行われますが、言語の授業は国家語であるキルギス語、外国語である英語、日本語で行われており、子供たちはこの学校で計4つの言語を学んでいます。外国語を学ぶことによって、子供たちが海外でも活躍してほしいと思っています。しかし、母国語も大事にしてほしいと思っているので、例えば、休みの時間には、キルギス語だけで話すことを義務付けています。

―日本語を学習することにはどのような意味があるのでしょうか。

 テンサイ小学校は日本の礼儀、文化から学ぶことを重視しています。そして、日本語を学ぶことで日本への理解を深めることができると考えています。私たちは子供たちに日本人の誠実さ、まじめさから学び、キルギスを代表する人材としてふさわしい礼節を身につけてほしいと考えています。

―そろばんを学ぶ必要性についてはどのように考えていますか。

 まず、私たちは、数学は科学の王(King of the Science)だと考えており、そろばんの授業をかなり重視しています。その学習を通じて、生徒たちには電卓などを使わずに自分の頭で考えられるようになってほしいと考えています。そろばんを使った学習をすることで、生徒たちはそろばんがないときも数を見て頭の中で計算し、桁数の多い計算を瞬時に行うことができるようになります。それは計算能力だけでなく、分析的思考・記憶力・集中力など多くの力を伸ばすことができるので、とても効果的だと考えています。

―キルギスの学校では、普通は掃除を外部委託していると聞きますが、この学校では生徒自らが行っていると聞きました。その目的を教えてください。

 生徒たちが自分の学校を掃除することも日本の教育で良いと感じているところの1つです。通常のキルギスの小学校では、掃除の業者はこどもたちが帰ったあと遅くに来るので、子供たちは誰がどんなふうに掃除しているかを知ることなく、常にきれいな状態の学校で過ごすことができます。そのため、自分たちで掃除をして掃除の大変さや大切さを実感することは大事だと考えています。

一日に3回の給食があるそうですがこれにはどのような意図がありますか。

 テンサイ小学校では1日に朝、昼、夕方の3度の給食があります。これは両親が働いている忙しい家庭の子供たちでも、バランスの良い食事をとれるようにする狙いがあります。働いている親にとって毎日子供たちにバランスの良い食事を与えることは大変なことです。そこで1日3回、給食を提供することによって、子供たちのバランスの良い食事を実現しているのです。例えば朝食では記憶力の向上に役立つナッツ類を取り入れたり、胃の調子を整えるカボチャを取り入れたりするなど、メニューを工夫して、子供たちが授業に休まず出席できるようにすることを目指しています。

 また、このほかにも共働きの家庭に配慮した取り組みとして、8時から18時まで開校していることが挙げられます。これにより親は退勤後に子供たちを迎えに来ることができるため、通勤ラッシュの危険な時間帯に子供たちだけで下校させるのを避けることができます。

―この学校の現在の課題は何ですか。

 大きく分けて2つあります。それは日本語教育の質と新しい学校システムについてです。

 まず1つ目の日本語教育の質についてです。私たちの学校ではロシア語・英語・キルギス語・日本語の4つの言語を教えています。外国語である英語と日本語のうち、日本語は英語に比べて教科書や指導法、メソッドが不足しているという問題があります。KRJCからもいろいろサポートをしてもらっていますが、よりクオリティの高い日本語教育を提供するため、日本語ボランティアを取り入れるなど新たな取り組みを計画しています。

 次に2つ目は新しい学校システムについてです。今後、私たちはより大きく、より安全な学習環境を提供したいと考えています。その一つとして、インターネットを使って保護者に子どもたちの様子を伝えられるシステムの導入を考えています。それは、学校内の各所にカメラを設置し、家族が、子供たちが授業を受けたり、友達と遊んだりする様子を見られるようにするものです。これを実現するためには、キルギスの技術だけでは難しいため、その足りない技術をどのように補完するのかが課題です。

―KRJCビジネスコースでの経験は現在どのように活かされていますか。

 現在の学校運営においてKRJCのビジネスコースでの経験が非常に活きています。KRJCでは会計、法律、人材確保の方法など、具体的なビジネスの基礎を学びました。これが現在の私の経営理念のベースになっています。また、ビジネスコースの研修の一環として日本を訪れました。日本では5つの日本企業を訪問し、多くの刺激を受けました。さらにKRJCのビジネスコースでは意識の高い仲間に出会うことができました。彼らとは現在でも友好的な関係を保っており、今でも重要なネットワークとなっています。

―最後にテンサイ小学校の生徒の将来にどんなことを期待するのか教えてください。

 生徒たちには、卒業後も良い教育機関で勉強を続け、専門的な知識を身に付け、国内外で活躍できる人材になってほしいと思っています。キルギス人が活躍することは、この国の良さが世界の人々に伝わるきっかけにもなると思うので期待しています。また、特にキルギスでは、科学、経済学、IT、生物学、医学などの分野の専門家が不足しているため、それが今後解消されるといいなと考えています。そのような学問的なこと以外にも、時間を守る・家族や自然を愛するなどの日本人が大切にしていることを身に付けた大人になってほしいです。

                          

 まず、日本から遠く離れたキルギスで日本式の教育が行われているというのは驚きでした。インタビュー、授業見学を通してテンサイ学校では子供たちの将来から家族の生活までも考慮した素晴らしい教育が行われていると思いました。見学させていただいた日本語の授業の中では童謡を歌ったり、盆踊りをしたりと意欲的に授業に参加する生徒たちの姿を見ることができ、日本人として非常にうれしかったです。今後はテンサイ小学校が現在掲げる教育をどこまで実現できるかがカギになってくると思いました。私としてもテンサイ学校への訪問を通して、日本で生活していては気づかない日本の良さを知ることができ、日本人として大切にすべきものを考える良い機会になりました。今後のテンサイ学校の発展と生徒たちの健やかな成長を期待します。(江原)

 今回、インタビューを行って印象的だったのは、終始ジベックさんの言葉や姿勢から「子どもたちのために良い教育を提供したい」「キルギスという国をもっと発展させたい」という意思が感じられたことでした。これから更に年月を経て、まだできたばかりのこの学校がどうなっているのか、そしてこのキルギスという国がどうなっているのかが、とても楽しみになりました。今回のインタビューで知ることのできた、この学校と国の「今」だけにとどまらず、「これから」にも引き続き注目していきたいです。インタビューにご協力頂きありがとうございました。(小島)

聞き手:筑波大学インターン 江原輝・小島杏水

(このインタビューは英語で実施されました)


 

 

 

 




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